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2008/03/12

イージス艦の不祥事

「海の散歩道」に今回の事件を掲載するにはあまりにもお粗末で「多事争論」に「元船乗り」としての見解?を書くことにした。小生もアラスカ、ベーリング海からの帰路ではこのような場面に必ず遭遇したものである。犬吠埼から野島崎の沖を廻り東京湾に入る船舶は必ず今回の様な場面に直面するのでブリッジ当直をした経験のある方は事故の全容が明かされるまでもなく「原因」が何であるか即座に判断できたのではなかろうか。防衛省・自衛隊の怠慢を云々する以前に「船員」失格である。当直仕官も艦内の規律も海上自衛隊という組織も総てが失格!である。通常の航海では20~12マイルレンジで視認とは別にレーダーによる見張りを常時行いながら航行する。船舶の輻輳する海域に入るとレーダーワッチは重要な作業となる。6マイル・3マイルレンジと探査距離を縮めながら相手船舶の動向を目とレーダーの両方で確認しながら注意深く航行をし早め早めに避航動作をとりながら航行するのが常識である。今回の様な場合、まず船団の大まかな動きを推測し早めに避航(進路変更をし船団との接近距離を確保する)するのが一番確実であった。漁船は進路を度々変えて来るので予測がつけ難く止む無く危険と判断した場合は「減速」をする。それでも危険状態を回避できないときはサーチライトを相手ブリッジに向け照射するかVHF16チャンネルで注意を喚起する。それでも相手の動作が読めないときには自船の行脚を完全に止める(スピードをゼロにする為全速後進をかける)。これらの基本動作の総てがイージス艦「あたご」では遅かったのである。艦長が仮眠中であった、、等と問題にされているがこのような海域でいちいち艦長が昇橋するなど考えられないことである。当直仕官の判断で十分安全な航海ができるのである。小生の船長時代は「浦賀水道」に入る30分前に昇橋していたが当直仕官に任せておけば十分でありパイロットチェアに座り余程のことがない限り自ら指示を出すことはなかった。ただし浦賀水道航路や中の瀬航路などの「航路内」で遊漁船が縦横無尽に商売?をしているのには閉口した。探照灯を照射しても汽笛を鳴らしてもぎりぎりまで動こうとしない!航路内に良いポイントがあるのか、釣り客へのサービス精神からか、こちらが全速後進でもしないとヤバイと言う瞬間まで動かないのである。大した根性モンであるがこちらも「ぶつかっても知らんぞ~~」と言う位の気持ちがないととても前進出来ないのである。話が横道にそれてしまったが「あたご」の当直の人数を始めて知って唖然とした。トン数から言えば小生の船も「あたご」と同じくらいだったが当直は仕官1名、操舵手1名、セーラー1名だったのに対し何と両舷に二人、後方に二人、さらには指揮所でもレーダーワッチが居たと聞いて自衛艦の仕組みは一体どうなっているのだ?と空恐ろしい気がした。今回の事件で確信したことは今の防衛省の体質をもってして「日本国」の国防は100%不可能と言うことである。総合指揮所の火災、機密漏えい、海難事故、遡って名前さえ忘れてしまった防衛事務次官の逮捕、、、、まともな政治家が出現しないかぎり日本の堕落をとめることは出来ない。